データ基盤の構築には多くの要素が絡み合いますが、ここではその基本的な進め方を整理します。
ステップの概要
前回ご紹介した各要素を最初から一つひとつそろえていく必要はありませんし、片っ端から完成させようとする必要もありません。
大きな流れは、デジタルトランスフォーメーションの進め方に「基盤」という性質を掛け合わせた形になります。具体的には、[情報収集] → [PoC] → [標準化] → [展開・拡大] → [深化] の順に、段階を追って進めていきます。

また、組織の成熟度によっては、あるステップで一度足踏みすることもあります。必ずしも最後まで進まなければならないわけではなく、次のステップへ進むかどうかは、都度判断しながら進めていくことが重要です。
PoC フェーズ
情報収集フェーズで得た内容の中から、すぐに対応できそうなものをピックアップし、必要なデータを収集して何らかの成果を出します。このフェーズのポイントは、クイックに取り組んで成果を見せることです。
ここで注意したいのは、データの収集が想像以上に難しいという点です。まずは「すでに集められるデータで何ができるか」を考えるアプローチが現実的です。
また、次の標準化フェーズを常に意識しながら進めることが非常に重要です。課題の解決自体は、各企画系部門が主体となって取り組むべきです。販売上の課題であれば販売部門、生産上の課題であれば生産部門が主体となるようにします。本格的な解決まで至らなくても構いません。
このフェーズでは、ソリューション志向に傾きすぎて課題解決自体に熱中するあまり、本来のデジタルトランスフォーメーションの目的から外れてしまうケースも起こり得ます。こうした「方向違いの暴走」には注意が必要です。データ基盤を作る IT 部門の主要な目的は社内の課題解決ではありません。
標準化フェーズ
標準化フェーズは、データ民主化の環境を実現するうえで最も重要なフェーズです。PoC フェーズを通じて明らかになった標準化に関わる事項を、このフェーズで実施します。
具体的には、以下のような標準化を行います。
• システム間のコード体系の違いを把握し、エンタープライズ全体で統制すべきコード体系を整理したうえで、方針を作成する
• データを分類し、公開範囲やアクセス方法に関する標準を作成する
• データの所在、問い合わせ先、オーナーなどを整備し、簡易的なカタログを作成する
• ゴールデンデータソース、ゴールデンコピーなど MDM の考え方を整備し、データリネージが可能なポリシーを作成する
• 可能であれば品質の基準を作成する。ただし、「基盤」という観点ではデータ品質の扱い方はやや複雑になるため、概要の作成にとどめてもよい
• ビジネス上、統一が必要なメトリックやセマンティックを把握し、方針を作成する。ただし、過度なセマンティクスの統一は避けるべきである
• 標準とすべきマスタを把握し、エンタープライズリポジトリへの配置計画を行う
なお、コングロマリット型の組織では、顧客に近いビジネス領域の統一は現実的ではありません。すなわち、データアーキテクチャやアプリケーションアーキテクチャの完全統一も不可能です。この点を十分に留意しながら標準化を進める必要があります。
展開・拡大フェーズ
このフェーズでは、標準化フェーズで定めた標準とポリシーを会社全体に展開していきます。小規模から始め、徐々に拡大していくことが基本方針です。
展開の起動力としては、「既存業務の見える化 ~ 既存業務の最適化」を推進するアプローチが有効です。
ポリシーの位置づけをしっかりと定めておかないと、各部門の説得に苦慮するフェーズになりがちです。ポリシーとは、部門の都合によって適用しないことが許されるものではありません。一方で、事業のビジネス実態を考慮せず、現場の足を引っ張るようなポリシーもまた不適切です。
おすすめの方針は、「ポリシーは半強制とし、ルールは各ビジネス側で作らせる」というアプローチです。また、ポリシーや標準への準拠状況をモニタリングし続けることも重要です。
あわせて、個別のビジネス側が自由にデータを扱える環境を整備していきます。各ドメインでそれぞれのセマンティックとメトリクスを確定し、同一ドメイン内での局所的な標準を定めます。この取り組みは、中央の IT 部門ではなく、ドメイン側の IT が主体となって進めるべきです。
深化・自動化フェーズ
最終フェーズでは、データを人が利用するだけでなく、プログラムや AI に適合させることを目的として、メタデータを拡張していきます。
自律化、リアルタイム化、予測、シミュレーションなど、より高度な活用へとデータを適合させていきます。このフェーズは、既存業務の最適化にとどまらず、既存業務に新しい価値を生み出し、ビジネスの方向性そのものを決定できるような段階へと進化していくフェーズです。
参考文献
Zhamak Dehghani, “How to Move Beyond a Monolithic Data Lake to a Distributed Data Mesh”, martinfowler.com (2019)
https://martinfowler.com/articles/data-monolith-to-mesh.html
Zhamak Dehghani, “How to Move Beyond a Monolithic Data Lake to a Distributed Data Mesh”, martinfowler.com (2019)
「連合コンピュテーショナルガバナンス(Federated Computational Governance)」
https://martinfowler.com/articles/data-mesh-principles.html
Einat Orr, Data Mesh Applied: How to Move Beyond the Data Lake with lakeFS
https://lakefs.io/blog/data-mesh-applied-how-to-move-beyond-the-data-lake-with-lakefs/
DAMA International, DAMA-DMBOK: Data Management Body of Knowledge (2nd Edition, 2017)
Reference & Master Data Management、Metadata Management
https://www.dama.org/cpages/body-of-knowledge


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