大規模データ基盤構築: データ基盤のグランドデザイン : 大規模な組織の現状

大規模データ基盤構築

データ基盤構築に先立ち、事前に話しておくべきことがあります。

「大規模な組織」とは、事業が多様化した組織

はじめに」のページで、今回扱う企業規模を「多事業複合体のグローバル企業」としていますが、多事業複合体とは顧客が多方面にわたっている組織のことです。従業員数や売上高が多くても顧客タイプが 1 種類 (事業が 1 種類) の組織ではありません。逆にこれらが小さくても、様々な顧客タイプを持ち、ある程度のデータ量があれば、これから説明することに当てはまる可能性があります。

「大規模な組織」ではデータとアプリケーションは統一されていない

エンタープライズアーキテクチャを基に考えると、多事業組織のほとんどのケースでは、データスキーマやアプリケーションは統一されておらず、統制もされていない状態です。

出展: エンタープライズ・アーキテクチャの表現方式についての研究
* 企業の成熟度 Stage3 における 4 つの標準化オペレーション モデル

この論文に基づけば、個別最適こそが安定した最適解だからです。自分の会社が個別最適でITを導入したことを嘆く必要はありません。
ただし、ビジネスのアーキテクチャとは顧客に基づく部分が強く、完全な社内業務であるものは比較的統一・統制が取れているものは多いのであしからず。例を挙げると、人事と会計がその代表であり、ほぼ問題なく統一できることが多いです。多様性とは顧客に強く結び付くからです。

データの集約・統合を考えるときには重要

後述するDWHやマスター等、データの集約・統合を考えるうえでは、この前提は非常に重要です。
 自分の会社が個別最適でITを導入したのが失敗と思う必要はなく、むしろこれが最適解であることを理解する必要があります。同時に、これから向かう先も、個別最適と統制を共存させていかざるを得ないことを心しなければなりません。
 大規模な組織での過度な統一志向は、上り坂に向かって荷車を押すがごとくに大変な労力を伴うも、ちょっとした考慮不足で計画が崩壊します。それは前準備や物量から来るものではなく多様性から来るものであることもしっかりと理解しておきたいところです。

 ある会社は、すべての海外現地法人のシステムを無理に同一アプリケーションに統一しようとして、ものの見事に頓挫したことがあります。事後に「あるべき姿と目的をしっかり共有していなかったから」「ビジネスプロセスの統一を同時にすすめなかったから」という反省までなされましたが、その方向に反省してもおそらく次に生かされることはありません。
 また同様に、マスタの統一を試みて失敗したこともあります。すべての事業で使える販売分析 DWH を作った末にたった 1 つの事業でしか使われなかったこともあります。これら多様性を前提にしないデータ アーキテクチャはいとも簡単に崩れ去りました。

残念なことに、データ基盤の構築に当たり多くのコンサルティング会社と会話をしていても、この点を深く理解していないと思われるケースは多いです。

以上が、簡単に述べた、大規模な組織でのデータに関する As-Is と留意すべき点です。

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